スノーデン 日本への警告
エドワード・スノーデン
青木 理 / 井桁大介
集英社新書
スノーデン、日本の監視社会を語る
エドワード・ジョセフ・スノーデン氏は1983年6月、米国・ノースカロライナ州出身の政治活動家です。米国の中央情報局(CIA)・国家安全保障局(NSA)に勤務していた2013年、国家の市民監視体制を内部告発。その衝撃的なリーク内容によって、一躍世界中の注目を集める要人となりました。米国は情報漏洩罪などでスノーデン氏を国際指名手配しており、現在も同氏は国外に居住しています。
「スノーデン 日本への警告」は、16年6月に自由人権協会が東大で催した70周年記念のプレシンポジウムを書籍収録した内容です。スノーデン氏はジャーナリストの青木理氏の要請に応じて同シンポジウムにライブ動画で出演。パネリストたちとのやり取りも収められています。
米国の市民監視活動の実態とは
スノーデン氏は自らがNSAで従事していた職務に基づいて、米国の市民監視活動の実態を明かしています。その内容は正に驚くべきものですが、ここでは簡単に要旨を挙げておきます。
・CIAは全世界の人々のメタ・データ(行動履歴やスマホの発着信履歴、サイト閲覧履歴など)を収集・記録している。これらのデータの収集によって、歴史上かつてないほどの監視社会が現実化しつつある。
・スマホの普及とITテクノロジーの発達によって、上記のような監視活動が安価なコストで可能となった。
・グーグル、アップル、フェイスブックなどのITグローバル企業が米国を本拠地としていることで、上記のようなデータは世界のあらゆるところからいったん米国を経由するようになっている。この情報の流れがCIAの活動を特権化(世界中に監視を及ぼすことができる)している。
スノーデン氏の訴えをどう受け止めるか
スノーデン氏は米国の監視活動の網は、日本にも例外なく被せられていると断言しています。スノーデン氏が命をかけて内部告発に踏み切った動機、その思いには耳を傾けるべきでしょう。「悪いことをしない善良な市民であれば、監視されていてもかまわない」。そう考えて国家に無制限な監視の権力を許すことは、なぜいけないのか。そんな疑問に対して自ら思考し、行動していくために、本書は恰好の動機と不可欠な知識を与えてくれるはずです。
<(~)犯罪にかかわったという疑いのない人や一切の悪事に関与していない人に関しては、推定無罪の原則が適用されます。つまり、誰の権利も侵害しておらず、誰にも危害を与えていない市民は、国に詮索されない権利を有するということです。
こうした権利が侵害されたのです。それこそ私が目撃したものです。>(P27)
<プライバシーとは、悪いことを隠すということではありません。プライバシーとは力です。プライバシーとはあなた自身のことです。プライバシーは自分であるための権利です。>(P67)
<(~)最後にこのことを忘れないで下さい。自由を享受できる社会は市民が主役になって初めて実現されるということを。>(P84)