アリエリー教授の「行動経済学」入門
ダン・アリエリー / NHK白熱教室制作チーム訳
ハヤカワ文庫 NF
< 『お金と感情と意思決定の白熱教室』では、人間の奇妙な行動や心理のパターンを、さまざまな実験やケーススタディを通して解き明かしていく。
ここサンフランシスコでの講義には、シリコンバレーの起業家やIT企業のエリートなど、君たちのような野心家がたくさん集まった。
最新の行動経済学を学べば、ビジネスのヒントにできるだけでなく、日常生活にも役立てることができるだろう。
(中略)
どうすればよい意思決定ができるのか。
具体的な例を挙げながら考えていこう。>
(本書冒頭のプロローグ)
アリエリー教授の”授業”による行動経済学への誘い
行動経済学は近年、経済学で台頭してきている学問領域です。「人間の意思決定は必ずしも合理的にされるわけではなく、人間ならではの心理による特定のバイアスに影響する」ことを追究する学問です。本書は行動経済学の世界的な第一人者であるダン・アリエリー教授がサンフランシスコで行った講義、それを放送したNHK「白熱教室」を書籍化したものです。アリエリー教授が身近な事例をもとに進む授業に引き込まれ、行動経済学の基本的なエッセンスを面白く学ぶことができます。
学んだエッセンスをどう生かすか、実用を考えたくなる知識
全6回、6章立ての授業のテーマを見るだけで、本書を手に取ってみたくなる人もいるはずです。例えば…
・あなたが”人に流される”理由
・デート必勝法教えます!?
・ダイエット成功への道!
など、どれも一度はわが身のこととして考えたことがあるのではないでしょうか。
アリエリー教授が教えてくれる研究結果=人間の意思決定のクセは、どれも実証実験に基づいて学問的にも有意性が認められたものばかり。それぞれの事例を授業で学んだら、自分の仕事や生活に適用・応用をいくらでも考えられそうです。自分が同じワナにハマらないように気をつけたり、ビジネスシーンや買い物や人間関係などで一つでも活用できれば、本書を読んでトクした!となるでしょう。
アリエリー教授の講義のポイントを身につけるには
アリエリー教授の講義のポイントは、本書では分かりやすく太字で示されています。どれも短いセンテンスで簡潔に表現されているので、気になったところはノートやメモに覚え書きして後で読み返すようにするのがいいと思います。
私がメモしたものを一部分だけ挙げると…
<デフォルトは一番楽 / デフォルトがお勧めだとみなされる>(P24)
<感情に訴える方法は統計を使う方法と共存できない>(P98)
<人は何かに労力を注げば、それを愛して大切にするようになる>(P192)
ちなみに、このうちのどれか一つのバイアスは、世界中の多くの国で実施されているある政策の結果に極めて大きな影響(バラツキ)を及ぼしています。「たったそれだけのことで!?」と、私は非常に驚きました。
本書はそんな目からウロコ話や「知っていればきっと役に立つ知識」が満載です。授業の採録なので軽く読みこなせるので、行動経済学に興味のある方にはおススメです。